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ステークホルダーとのエンゲージメント

同世代と話す経営とSDGsについて

近藤 高行氏

1974年生まれ。石川県金沢市出身。1996年金沢工業高等専門学校卒業後、語学留学のため半年間渡米。1996年9月会宝産業㈱入社。2015年オーストラリアのメルボルンにあるRMIT大学(ロイヤルメルボルン工科大学)にあるTAFE※にて、より実践的なスキルや知識を学び、即戦力となる能力を取得。そして帰国後も社員とともに多くの経験を重ね、創業者の父の言葉と松下幸之助氏を尊敬し事業発展に尽力する。 そして2015年4月創業家2代目として代表取締役社長に就任。 ※TAFE(Technical and Further Education) オーストラリアの6つの州(ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、クィーンズランド州、南オーストラリア州、西オーストラリア州、タスマニア州)と2つの準州(オーストラリア首都特別地域、ノーザンテリトリー)が、それぞれ主体となり、資金調達から運営まで行なっている専門教育機関。

塚本 健太

1978年生まれ。石川県小松市出身。2000年東海大学中退後、サックスで音楽の道を志す。しかし創業家としての使命を果たす事を決断し、京セラコミュンケーション㈱を経て2009年コマニー㈱へ入社。2012年からは管理統括本部長としてコンプライアンス・ガバナンス、そして財務の重要性を知り、2015年からは営業のトップとして全国を回る。全営業との面談では一人ひとりのマンパワーチェックを直接自身が行い、期待値を伝授。そして2019年6月創業家3代目として代表取締役社長執行役員に就任予定。

Q.会宝産業、そしてコマニーが経営として大切にしていることは何ですか?

近藤
 会宝産業は野村総研さんとご縁があり、その中で社会課題解決型ビジネスに詳しい平本督太郎さん(現:金沢工業大学SDGs推進センター長・会宝産業顧問)との出会いがきっかけです。平本先生が未来に向けてのソリューションとして紹介されたのがSDGsでした。会宝産業の事業は、自動車などの廃棄なので、モノをつくる産業とは真逆の産業です。そのため、華やかなメーカーのようにやっていることが表に出てきません。それがSDGsの取り組みにより「静脈産業」として社会にアピールしていけるようになったのは大変良いことだと考えています。

塚本
 自分たちがもっと社会課題に取り組みたいと思ったちょうどその時にSDGsがあったという感じです。コマニーは社是に「人道と友愛の精神」を掲げ、人間力向上などを重視した研修を行っており、映像を通して社会問題を学んだり世の中の変化について勉強してきていました。そうして社会の課題について学ぶうちに、自分たちももっと社会に貢献したいと思うように変化してきました。そしてSDGsに出会って更に自分たちの取り組みを深められると思い、本格的にやっていこうと昨年春に「コマニーSDGs宣言」をしました。

Q.SDGsについて、具体的な取り組みとして何をしてらっしゃいますか?

近藤
 会宝産業は自動車リサイクル業をしているので、SDGs目標12番の「つくる責任つかう責任」に付け加えて「あとしまつの責任」があると考えています。日本では自動車リサイクル法が施行されているので、環境問題に対して徹底しています。でも海外に目を向けると、途上国では自動車を解体するとき、使える部分の部品だけ取り去って、あとは無責任に放置する業者が多いのです。そういった業者は、自分の儲けだけあれば良いと考えています。地球は一つです。日本で問題はなくてもほかの国に自動車廃棄の問題がある限り、地球人としてこの問題を解決しなければならないと考えています。

塚本
 以前からコマニーは、社会貢献活動を積極的に行ってきました。事業も社会貢献活動も、良心に正直であればやるべきだ、というのが当社の方針です。SDGsが掲げる「誰一人取り残さない」社会を実現するために、どのような人にどのように幸福になってもらいたいかを表した、「コマニーSDGs∞(メビウス)モデル」をつくり、経営に実装しています。SDGsに対する取り組みを始めてから、社会課題に対する意識も高くなりました。地震大国の日本だからこそ震度7でも倒れない耐震パーティションを商品開発したり、災害時のトイレ問題についても研究開発に取り組むなど、SDGsのおかげで様々な事に対して取り組みの思考が変わってきました。

Q.SDGsを取り入れて良かったこと、逆に課題に感じていることは何ですか?

塚本
 良かったことは、会社として社会の課題解決を事業の中に落とし込んで、利益を出して共に持続可能な未来を描くようになったことです。コマニーはメーカーとして技術で世の中にどう貢献するか、という思考回路で経営を考えるようになりました。ビジネスとして、これからどうあるべきかの道筋がSDGsではっきりしました。
 また、課題に感じていることはたくさんありますが、強いて1つ言うのであればジェンダー不平等だと考えています。建築業は男性社会だというこれまでの固定概念があり、女性が極めて少ない業界です。コマニーはこの問題に一石を投じたい。実際に私は新卒採用の面接にも立ち会いますが、女性はとても優秀な方が多いことに気づきます。

近藤
 良かったことは、BCtA(ビジネス行動要請(Business Call to Action))に選ばれたことです。かつてBCtA発足初期に選ばれた会社はすべてメーカーでした。世の中を良くしていくのは、モノを製造する「動脈産業」だと思っていましたが、つくったモノを後始末し、循環させる「静脈産業」の会宝産業もBCtAに選んでくださったことがとても嬉しいです。
 また、課題に感じていることは、「静脈産業」そのものの認知度が低いことです。もっと積極的に発信していくことで解決できると考えています。

※ビジネス行動要請(Business Call to Action) 2008年に発足した国連開発計画(UNDP)を含む6つの開発機関・政府が主導する、長期的視点で商業目的と開発目的を同時に達成できるビジネスモデルを模索し、促進する取り組みです。BCtAは、企業がそのようなビジネスモデルと企業のコアとなる技術を適用しながら、貧困層の成長を活性化させ、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を促進することを目的としています

Q.SDGsに関しての社内浸透はそれぞれいかがでしょうか?

近藤
 SDGsに関わらず、社内浸透は企業にとって大きな課題です。BCtAや国連が取り組んでいる課題についても社員の認知度は低いです。これらについて、毎月の全体会議で伝え続けました。
 ほかにも、社員が未来の会宝産業を考えるためのKAIHO2030プロジェクトを立ち上げました。メンバーを募集したところ17名が手を上げてくれました。このプロジェクトは、未来のことが書いてある本を各自が読んでプレゼンテーション、議論し、未来の会宝産業を自分たちで創る!ことを目的としています。プロジェクトの最後には会宝産業の未来について、役員の前でプレゼンテーションをする発表の場を設け、大変素晴らしい機会となりました。最初は不満ばかりが出ていましたが、ある時から未来を考える視点に変わり、主体的に取り組んでくれるようになりました。参加したメンバーにとって、未来や社会課題が自分事として考えられるようになったことが大きな成果だと考えています。

塚本
 浸透という意味ではコマニーも同じ課題を抱えています。社員が1500人という大所帯だということを言い訳にはできませんが、周知させることは大変です。だから、まずはSDGsを身近に感じられるよう、コマニーゴールズというコマニー版SDGsの映像をつくり、周年式典のイベントで発表しました。また、営業員にはSDGsのバッチを付けるように促しています。すると、お客様に「それは何ですか?」と聞かれ、説明しなければならない場面に遭遇します。
 そのため、それぞれが自主的に説明できるよう理解を深めるきっかけになっています。 そのほかには、コマニーSDGs新聞をつくって全社員に配布したり、創立記念式典のノベルティとしてSDGs17色カラーのエコバックを制作し、全社員に配布するなど、意識的に周知活動をしています。

Q.地方にある企業として「地域でSDGs」として考えたときに、地域への取り組みや採用との関連を教えて下さい。

近藤
 SDGsへの取り組みが人の採用に繋がるというのは間違いありません。会宝産業は石川県の金沢市にあり、昔は石川県内の人が就職していました。しかし今の学生は世の中や社会に貢献したいという気持ちが多いのでしょうか、最近は県外からも採用希望者が来てくれています。これまでは、社名を知っているから見てみようという方が多かったですが、今ではやっていることを理解し賛同してくれて「会宝産業に入りたい」と言って下さり、そこでもSDGsからの広がりを感じます。

塚本
 コマニーも採用では注目していただき、マイナビでは北陸の人気企業ランキング2位になっています。また地域という観点ではSDGsの取り組みは企業だけではダメで、市民や行政を含め、様々な立場の人が参加して各々の強みが集まらないと、地域の盛り上がりが加速しないのではないかと感じています。コマニーでは地域の方々との交流を目的としていくつか取り組みを行っています。例えば、毎年夏にはチャリティに楽しんで参加してもらうため「コマフェス」というお祭りをしています。昨年はプラスチック問題が話題になっていたことから、ペットボトルを使わずにやってみたり、地域の福祉施設の方を呼んで交流してもらったりしています。このようなことが地域の方にSDGsを知る機会になれば良いと考えています。こうやって地域の方と盛り上げていけば、そこから大きな変化が生まれると思っています。

Q.お二人ともこれからのビジョンをお持ちだと思いますが、どのような未来がきてほしいですか?また経営者として、ご自分の会社をどのようにしていきたいでしょうか?

近藤
 すべてのことを自分事として捉えられるような人が増えてほしいです。ほかの国だから、隣の家だから知らないではなく、自分事になるともっと深く考えていけると思います。もう自分だけ儲かればよい時代は終わりました。SDGsの観点でいくと経済の発展だけでなく、環境、社会とすべてが良くないといけません。そうであれば、周りを巻き込んでの発信や発言、行動をしていかないと世の中は変わっていかないのではと考えています。たまたまではありますが、我々のやっている「静脈産業」ではこのことが広めやすいです。いま会宝産業としてやっていることをオープンにして、共感を得ていくことが会宝産業の役割だと感じています。
 普段みなさんの中で後始末の興味はあまりないと思います。しかしどのようにつくられるかといったモノづくりの興味関心は多くあると思います。例えば新車には興味がありますが、廃棄の興味は新車と同様とは言いにくいです。お世話になった車に感謝はあってもそのあとのことは知らないことが多いです。廃車のあとの認知度も高めていきたいです。廃棄の時でも、使えるものはまだまだたくさんあります。10年10万kmが車の廃車時期と思われていますが、そこからたくさんの部品がまだ海外で使えます。そうすることで現地の方はハッピーになれます。単に廃車で終わりでななく、再利用できる流れをつくりたいです。私は命あるものは最後まで使い切りたいと思っています。

塚本
 我々コマニーは空間づくりのお手伝いをしています。モノの価値は日本ではほぼ満たされていますが、今は時間の価値を高めていくことに対するニーズがのすごく高まっていると感じています。少子高齢化、労働人口の減少、働き方改革などがその原因と考えられます。時間とは何かと考えた時、個人一人ひとりの残された命そのものです。その命の時間をどれだけ輝かせるか、それを実現するのにふさわしい環境をどうつくっていくかが私たちの役割になると思っています。空間が豊かになれば、一人ひとりの心が豊かになっていきますよね。するとほかの人のことを考えられるようになります。これは一社ではできないので、同じ志を持つ人たちと一緒に実現していきたいと考えています。

Q.最後にお二人はどのような経営者でいたいですか?

近藤
 まず、謙虚でいたいです。人はつい自分さえよければ良いという考えに陥りますが、社員のことを家族として見られる社長でいなければならないと考えています。そういう意味では私は今、全体性を重要視して経営をしています。以前、会社として悪くなっても、部門ごとの達成目標をクリアできていたら、喜んでいる従業員がいました。それでは、良い仕事はできません。会社は一つです。どこが欠けてもいけません。まず、自分の会社を全体で考えて、良くして、お客様を巻き込み、社会、環境とだんだん考えられる全体性の範囲を広げていきたいです。

塚本
 私も謙虚さを忘れないようにしたいです。「謙虚にしておごらず、更に努力を」この言葉は京セラ名誉会長の稲盛和夫氏が再生を果たしたJALを去る時に残した言葉ですが、本当にその通りだと思っています。私が社長になれるのは実力ではなく、創業家の長男だからです。その役目をいただいているという根本を忘れはいけないと考えています。また、会社は生身の人間によって成り立っていることを忘れてはならないと思っています。だから、社是にもある「我等の精神は人道と友愛である」を常に大切にして、社長として社員の考えていることに常に耳を傾けて応えていきたいです。

□対談DATA
対談日時: 2019年5月27日(月)

□対談者
会宝産業株式会社 代表取締役社長 近藤 高行氏
コマニー株式会社 取締役専務執行役員 塚本 健太

□ファシリテーター
SDGパートナーズ有限会社 代表取締役CEO 田瀬 和夫氏

□会宝産業株式会社 https://kaihosangyo.jp/
【事業内容】 使用済み自動車のエンジン、部品等を世界90か国に輸出し、使い古された自動車部品を無駄なく再利用するための「静脈産業」を担う。

□コマニー株式会社 https://www.comany.co.jp/
【事業内容】 パーティションのリーディングカンパニーとして、使命である「すべての人が光り輝く人生を送るために、より良く働き、より良く学び、より良く生きるための環境づくり、人づくりに貢献する」ことを通じて、社会的インパクトの創出を担う。

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